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【技術情報】有限要素法入門

2.6 辺要素法による磁場解析


辺要素を使った有限要素法を辺要素法とも呼んでおり、3次元の磁場解析ではこの方法が主流となっています。
静磁場解析の場合ベクトルポテンシャルを未知数とした方程式を解きますので、節点要素法の場合はこのベクトルポテンシャルを節点に配置した方程式を作ります。
したがってベクトルポテンシャルは要素境界で連続となります。
一方辺要素法ではベクトルポテンシャルの辺への射影成分の積分値を持たせているために要素境界では、境界面に対して接線成分は連続となるのですが法線成分は一般に不連続となります。
電磁場において、電場や磁場は物質境界で接線成分が連続で法線成分が不連続という性質を持っています。これに対して電束密度や磁束密度は法線成分が連続で接線成分が不連続となります。

それではベクトルポテンシャルはどうかといいますと前にも述べましたゲージの自由度というのがありこれが許す限り要素境界において法線成分が不連続であることは問題ありません。むしろ動的な問題では電場が発生しますがゲージ条件の取り方でベクトルポテンシャルと電場の方向を等しくすることが出来ます。
その場合、物質境界で法線成分が不連続であるというのは大変都合の良いことになります。これに関しては動的な磁場解析を扱うさいに述べたいと思います。

さて、静磁場解析の方程式と任意のベクトル関数の内積をとり解析領域で積分して部分積分により微分の階数を減らした弱形式の方程式(2.4-4)式から始めます。
この式を要素分割した、(2.4-5)式までは要素内部の補間とは関係ないので辺要素法でも同じですが、要素内部での補間が(2.4-6)式ではなく次のようになります。
\begin{equation}
\begin{split}
&\boldsymbol{A}(\boldsymbol{x})=\sum_\alpha\boldsymbol{N}_\alpha(\boldsymbol{x})A^\alpha \\
&\boldsymbol{w}(\boldsymbol{x})=\sum_\alpha\boldsymbol{N}_\alpha(\boldsymbol{x})w^\alpha
\end{split} \tag*{$(2.6-1)$}
\end{equation}
これを(2.4-5)式、
\begin{equation}
\sum_n\int_{V_n}\mathrm{rot}\boldsymbol{w}\cdot\frac{1}{\mu}\mathrm{rot}\boldsymbol{A}dV
=\sum_n\int_{V_n}\boldsymbol{w}\cdot\boldsymbol{J}dV+\sum_n\int_{S_n}\boldsymbol{w}\cdot[\boldsymbol{H}\times\boldsymbol{n}]dS \notag
\end{equation}
の左辺に代入します。まず要素内部においてベクトルポテンシャルの回転が次のようになることに注意します。
\begin{equation}
\mathrm{rot}\boldsymbol{A}=\mathrm{rot}\bigl(\sum_\beta\boldsymbol{N}_\beta A^\beta\bigr)=\sum_\beta\mathrm{rot}\boldsymbol{N}_\beta A^\beta \notag
\end{equation}
これは回転 $\mathrm{rot}$ が線形演算子で和の記号と交換できるからです。
これより上の方程式の左辺は次のようになります。
\begin{equation}
\sum_n\sum_{\alpha\beta}w^{n\alpha}\int_{V_n}\mathrm{rot}\boldsymbol{N}_\alpha\cdot\frac{1}{\mu}\mathrm{rot}\boldsymbol{N}_\beta dVA^{n\beta} \notag
\end{equation}
また右辺は次のようになります。
\begin{equation}
\sum_n\sum_\alpha w^{n\alpha}\int_{V_n}\boldsymbol{N}_\alpha\cdot\boldsymbol{J}dV
+\sum_n\sum_\alpha w^{n\alpha}\int_{S_n}\boldsymbol{N}_\alpha\cdot[\boldsymbol{H}\times\boldsymbol{n}]dS \notag
\end{equation}
これらの式は節点要素法のときと比べて非常に簡単な形となっていますが未知数がベクトルと違って成分を持っていないことによるものです。
これより要素行列と要素ベクトルは次のようになります。
\begin{equation}
\begin{split}
&K_{\alpha\beta}^{(n)}=\int_{V_n}\mathrm{rot}\boldsymbol{N}_\alpha\cdot\frac{1}{\mu}\mathrm{rot}\boldsymbol{N}_\beta dV \\
&F_\alpha^{(n)}=\int_{V_n}\boldsymbol{N}_\alpha\cdot\boldsymbol{J}dV+\int_{S_n}\boldsymbol{N}_\alpha\cdot[\boldsymbol{H}\times\boldsymbol{n}]dS
\end{split} \tag*{$(2.6-2)$}
\end{equation}