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【技術情報】光台通信

その12.電磁場の境界条件について

電磁場解析や熱伝導解析では,ある領域で定義されたポテンシャル場の問題として2階の微分方程式を以下に代表される境界条件のもとに解く場合がよくあります。

●境界条件の種類

(1)固定境界条件
電場解析における境界電位設定や熱伝導解析における境界温度設定など未知変数の一部を既知条件として値を定めるもの

(2)自然境界条件
導体に境界から流入する電流条件など,未知変数の微分値が境界上で取る値を定めるもの

(3)第3種境界条件
電磁波解析のインピーダンス境界条件や熱伝導解析における熱伝達境界条件など,固境界条件と自然境界条件の組み合わせで定義されるもの

(4)等ポテンシャル境界条件
電場解析における浮き導体の取り扱いなど複数の未知変数が同じ値となるように拘束条件を与えるもの

(5)周期境界条件
周期構造を持ちかつポテンシャル場も同じ周期性を有する回転機の磁場解析など,単位周期領域や半周期領域による解析を可能とするもの

実用的には各部分境界で異なる境界条件が定義され,併用される場合がよくあります。以下にその例を示していきます。(以降,境界に対する外向き法線方向をと定義します。)

解析例① 電場解析(平行平板電極)

 

 

解析例② 熱伝導解析

 

 

解析例③ 磁場解析(C型磁気ヘッドの漏れ)

磁場解析においてはベクトルポテンシャル が未知変数となるため,スカラーポテンシャルを未知変数とする電場解析や熱伝導解析の場合とは異なります。

ベクトルポテンシャルのz成分のみを未知変数とする二次元磁場解析の場合は電界解析や熱伝導解析と同等の取り扱いが可能です。

磁束密度より固定境界条件 を適用すれば容易に磁束密度が境界面に平行となる制約を課すことができます。また,自然境界条件を適用すれば磁束密度が境界面に垂直となる制約を課すことができます。

この例題では形状の対称性および対称面において磁束密度が境界面に垂直となる現象を利用し,モデル省略のために自然境界条件を使用しています。

次に三次元磁場解析の場合を示します。

より境界面上のベクトルポテンシャルの面内方向成分をゼロと置けば,磁束密度が境界面に平行となるように制御することができます。

またを満たすように境界面上のベクトルポテンシャルの微分値を定めれば磁束密度が境界面に垂直となるように制御できます。

 

 

解析例④ 静電場解析(浮き導体)

接地された金属箱に同じ大きさの導体球3つ入れて,1つ目に100V,2つ目は接地、3つ目は等ポテンシャル境界条件を与え浮き導体としています。対称面には電場垂直成分ゼロの自然境界条件を適用しています。

 

 

解析例⑤ 磁場解析(永久磁石電動機)

永久磁石電動機4極対の内,1極対90度領域をモデル化しました。周期境界条件の1aと1b,2aと2b,3aと3bがそれぞれ対応する面となります。
境界面上の未知変数は対応する90度回転した位置に存在するポテンシャルと等しくなるように拘束されます。

 

 

有限要素法電磁場解析における境界条件に関する留意点
(1)固定境界条件
電場解析においてはその電位の境界上で取る値を定め未知変数から除外します。
磁場解析においてはベクトルポテンシャルをゼロに固定して未知変数から除外します。

電場解析については特に同じ電位が設定された境界面に対して
          電場が境界面に垂直
          電流密度が境界面に垂直

磁場解析については
          磁束密度が境界面に平行
          電流密度が境界面に垂直

を満たします。

(2)自然境界条件
境界面上のポテンシャルを未知変数として取り扱い,有限要素法による定式化を行った際に表れる境界積分項をゼロと置き無視することで自然に満たされる境界条件です。

電場解析については
          電束密度が境界面に平行
          電流密度が境界面に平行

磁場解析については
          磁場が境界面に垂直
          電流密度が境界面に平行

が自然に満足されます。
但し,電場 ,電束密度 ,磁場 ,磁束密度 ,電流密度 とします。

また、次の事が成立します。

電場ベクトル と電束密度ベクトル が同じ方向を向いている場合  
磁束密度ベクトル と磁場ベクトル が同じ方向を向いている場合  

更に、異方性やヒステリシス特性を持つ誘電体や磁性体に直接自然境界条件を適用した場合は一般に


となります。