第3回 メッシュ分割
解析するためには、解析対象である実物をデータとしてコンピュータに取り込む必要があります。
有限要素解析では解析対象の寸法は座標をベースにして、小さい領域で分割します。
このように小さい領域で分割することをメッシュ分割といい、小さい領域をメッシュと呼んでいます。メッシュ分割をメッシュ切りと言ったりします。
メッシュ分割は磁場や渦電流の大きなところは細かく切る必要があり、精度を上げるためにはメッシュ分割が重要です。
また、構造解析とは異なり、磁場は解析対象の周囲の空気にも分布しますので、空気のメッシュも必要です。
特に、解析領域を分割したときの各ブロックをエレメントもしくは要素と呼びます。
図3−1.エレメント(要素)
エレメントの頂点をノードもしくは節点と呼んでいます。
図3−2.ノード(節点)
要素にはいくつか種類があります。代表的な5種類をご紹介いたします。
まず、2次元形状を分割するために使用される三角要素、四角要素があります。
図3−3.2次元要素
3次元形状では、四面体要素、五面体要素および六面体要素が挙げられます。
図3−4.3次元要素
例えば、下図のようなC型の電磁石を考えます。
図3−5.概要図
2次元解析と仮定し、四角要素で作成した要素分割図を以下に示します。
図3−6.メッシュ図
これで、寸法(座標)が考慮されたメッシュ作成ができました。
しかしながら、これだけでは、作成されたエレメントが磁性体なのか、それとも空気なのか判別ができません。
そこで、要素から材料特性を参照することにより、どの領域が、どの材料で作成されたかがわかります。
参照している材料によって、要素の色を変えて表示した図を以下に示します。
茶色の要素は磁性体の物性、緑色の要素はコイルを、残りの白色の要素は空気の物性を参照していることになります。
図3−7.メッシュ図
これで、要素は材料特性を参照することにより、どの材料で構成されているか判別ができます。
例えば、解析事例の磁気ヘッドのメッシュ図は下図のようになります。空気の要素が周囲にありますが、非表示としています。
図3−8.磁気ヘッドのメッシュ分割図
次に解析に適さない要素がありますので、いくつかご紹介致します。
特別な手法を使用しない限り、原則隣り合う要素は節点を共有しなくてはなりません。
下図のような2×2の要素を考えます。これは、隣り合う要素の節点が共有されており、正常な要素です。
図3−9.正常な要素(例)
下図は節点が共有されていない一例です。上側の2要素と下側の2要素がずれています。
図3−10.不適切な要素(例)
下図は要素が重なっており、こちらも不適切な要素です。
図3−11.不適切な要素(例)
また、要素の品質を調べる指標があります。一例として、下図のような要素の一辺が極端に短い偏平な要素を考えます。
要素の最短の辺の長さに対する最長の辺の比率をアスペクト比といいます。アスペクト比が大きい場合、収束性が悪化する傾向があります。
図3−12.偏平な要素(例)
動磁場解析の場合、導体が存在すると、材料の表面の磁束密度や渦電流が急激に変化するため、分割数を増やす必要があります。
簡単な例で、数値実験を行います。
下図のように円筒磁性体の周囲にコイルを配置した電磁石を考えます。
図3−13.概要図
このとき、表皮厚さは0.5[mm]程度です。
表皮厚さ0.5[mm]を1、2、3、4、5、20分割の6条件で解析し、渦電流密度[A/m2]と発熱量[W]を比較してみます。
表皮厚さより内側については6条件とも同じ分割幅です。解析モジュールはPHOTO-EDDYjωです。
下図は表皮厚さを2分割したときのメッシュ分割図です。軸対称形状のため、四角要素で作成しました。
図3−14.メッシュ図の例(表皮厚さ2分割)
解析結果として、横軸を要素中心のx座標、縦軸を電流密度の絶対値としたグラフを示します。
図3−14の赤線で囲まれた要素に着目しています。
図3−15.分割数と電流密度
また各分割数における磁性体の発熱量は以下の通りの結果が得られました。
表3−1.分割数と発熱量
●ポイント
精度を上げるためにはメッシュ分割が重要
磁場や渦電流の変化が大きなところはメッシュを細かく切る
有限要素法による磁場解析では空気のメッシュが必要
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