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【技術情報】電磁気あれこれ

9.EとD

 1.電場と電束密度

ミクロとマクロの話をしたときに、誘電体内部においてはマクロな電場Eがミクロな電場eの平均であり、マクロな電束密度Dはミクロな電束密度dの平均ではないこと、

を示しました。すなわちマクロな電束密度は誘電体の分極に関係した量であり、ミクロな電束密度の単純な平均ではないということです。
今回は誘電体を電気双極子の集まりとみなしミクロな電場の平均がマクロな電場になることを具体的に確かめ、マクロな電束密度がミクロな電場とどのような関係にあるかを調べたいと思います。

 

 

 2.誘電体の電気双極子モデル

平行な平面電極にはさまれた誘電体内部の電場について考えます。これらの電極面はxy面に平行であり、電極間の距離H 電位差をV とすれば、電極間には方向の一様な電場、

ができます。ここでは下の電極の方が高い電位をもっているとし電場の向きは下から上とします。
誘電体を電気双極子の集まりとしてモデル化します。電気双極子としては帯電した円柱状の剛体の絶縁体を考えます。
円柱は全て同じ形状であり円の面積s 高さh 、両面に電荷q-q が一様に分布しているものとします。
また、これらの円柱はすべて単位体積あたりn 個あり、中心位置は固定されているが自由に回転できるようになっているとします。
ここに上の電場がかかるとこれらの円柱の方向は全てそろい上面に電荷q 下面に電荷-q となりこれらの電荷の作る
電場によってミクロな電場が決定されます。
この電場は電気双極子の付近でいろいろな方向を向きますが平均するとz 成分しかもたないことはすぐ分かります。
そこでこの電場のz 成分をe とかき次のようにして平均をとります。

ここに、S は平均をとる電極の面積で、下の電極のz 座標をゼロとしています。
この積分内のz 方向の積分はxy 面のどこであっても電極間の電位差V となるので積分は簡単に実行できて次のようになります。

これからミクロな電場の平均がマクロな電場と一致していることが確認できました。
ここで積分が簡単に出来たのは電極間の電位差が決まっていたからであり、

電場e の分布は電気双極子付近で大きく変化しています。
正電極を含む小領域 Vの表面Sで電場の法線成分を積分すると、

となります。これに真空の誘電率ε0 をかけたものが電束ですから、正の電極から発生する電束はqとなり、
この電束が最終的に負の電極で吸収されます。ミクロな電束密度は、

ですが、ここで電気双極子内部に負の電極で消滅した電束を正の電極に戻すような電束を追加して新たにミクロな場d’を導入します。
この場は双極子外部ではミクロな電束密度に一致しますが双極子内部では、負の電極から正の電極に向かう電束qが加算されているためこれを電極の面積sで割った電束密度の分異なり、

となります。この右辺第2項は電気双極子モーメントを双極子の体積で割ったものとなっています。
これよりこの式を単位体積で体積積分すれば場の平均が求まり次のようになります。

ただし Pは単位体積当たりの電気双極子モーメントです。

ここでは誘電体を電気双極子の集合体としてモデル化したので、(2−3)式を使うと上式は、

となりマクロな電束密度と一致します。
もう少し一般的にいうと、今回(2−6)式で導入したミクロな場は電束の湧き出しも吸い込みもなく次の方程式を満たします。

このような性質は誘電体内部のマクロな電束密度と同じです。
結果をまとめますと次のようになります。
(1)ミクロな電場の平均がマクロな電場である。
(2)ミクロな電束密度に発散がゼロとなるように電気双極子内部のみに修正を加えて平均したものがマクロな電束密度である。