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【技術情報】電磁気あれこれ

2. 誘電体に働く力

 1.マックスウェルの応力と誘電体に働く力

誘電体全体が電場から受ける力はマックスウェルの応力によって計算できることが知られています。電場に関するマックスウェルの応力は、
電場Eの成分と真空の誘電率ε0を使って次のように書くことができます。

ここで、δijはクロネッカのデルタです。これを使うと誘電体に働く力は、

となります。積分は力を計算する誘電体を完全に取り囲んだ体積領域Vについての体積積分です。この積分はガウスの発散定理を使って面積分に直すことができ、次のようになります。

ここに、Sは体積領域Vの境界面で、Vが誘電体を完全に取り囲んでいるため真空中にあります。またnはこの面の外向き
の単位法線ベクトルです。
それでは、誘電体全体ではなくこの誘電体の部分に働く力はどのように計算すればよいのでしょうか。この場合(1−3)式を使うことはできません。
なぜなら(1−3)式の積分を行うためには境界面 が真空中にあることが必要だからです。誘電体の部分領域を取り囲む境界面は必ず誘電体の中を
とおり全てを真空中にとることができません。そこで、マックスウェルの応力テンソルを修正して誘電体の部分領域も
(1−3)式で計算できるようにすることを考えます。
まず(1−1)式において、真空の誘電率が含まれていることに着目します。真空中では電場Eと電束密度Dは、

の関係にありますから、これを使って次のように書き直します。

この式は真空中ではもちろん(1−1)式と同じになりますが、誘電体内部では異なった式になります。
ここで、(1−5)式を(1−1)式の誘電体中への拡張と考えて(1−3)式を計算すると誘電体の部分領域の力が
計算できると考えることができるでしょうか。
今回は、誘電体を電気双極子の集まりとするモデルを考え、(1−5)式が誘電体の部分領域の計算に妥当かどうか検討します。



2.電気双極子の集合体に働く電磁力

ここでは誘電体を電気双極子の集まりとしてモデル化します。もちろん実際の誘電体とは異なりますが、このようなモデル化により
物質中の電磁力を具体的に計算することができます。
電気双極子としては帯電した円柱状の剛体の絶縁体を考えます。
いま一つの電気双極子に着目し、円柱の半径a、高さh、上面に電荷q、下面に電荷-qが一様に分布しているものとします。
この双極子の位置における平均電場をEとし、この電場の変化に対してa及びhは十分小さいとすればこの絶縁体の受ける力は次のように計算できます。
一般性を失うことなく座標系の原点を今着目している円柱状絶縁体の中心にとり、z軸の向きを下面の中心から上面に向かうようにします。
a及びhは十分小さいので電場分布は次のように書けます。

これより上面の電荷に働く力F1は、

です。同様にして下面に働く力F2は次のようになります。

したがって上面と下面の受ける力の合計Fは、

となります。ここでqhはこの絶縁体のz方向の電気双極子モーメントpzですから、この式は、

のようにかけますが、一般の座標系で表現すれば、

となります。これ以降、この式の右辺のように同じ項に現れる同じ添字については1から3までについての和をとるものとします。
このような電気双極子が数多く分布しており、各々の双極子モーメントpは大きさも方向もそろっていませんが、
単位体積中に含まれる双極子の数Nは一定とします。
ここで電場の変化に対しては非常に小さいが、数多くの電気双極子を含む領域ΔVを考え、次式で定義される単位体積あたりの
電気双極子モーメントPを導入します。

Pは位置の関数となるので双極子の数が非常に多い場合は連続な場として考えることが出来ます。
このときこれらの双極子の受ける単位体積あたりの力fは次のようになります。

領域Vでこの式を積分すればこの領域に含まれる全ての双極子に働く力Fが計算できます。

さらに右辺第二項を表面積分に変換すれば、

となります。ここに、Sは今考えている双極子集合体の部分領域Vの境界面であり、nはこの面に外向きに取った単位法線ベクトルです。
ここで、

は電気双極子の帯電による電荷密度および表面電荷密度ですからこの式は次のようになります。

電気双極子の作る平均的な電荷密度と表面電荷密度が、平均的な電場からローレンツ力を受けるという非常に分かりやすい結果が得られました。
そこで電気双極子集合体の部分領域がこのような力を受けるためには、電磁応力テンソルがどのように表現されないといけないかを調べます。
そのために、(2−6)式に戻るのですが、この電気双極子の受ける平均の電場が(2−7)式より、

を満たさなければならないことに注意すれば(2−6)式は次のようになります。

ここで右辺第2項の被積分関数を次のように変形します。

ここで、静電場の場合

となるので(2−10)式は次のようになります。

これより電磁応力テンソルは次のようになります。

この式は予想された(1−5)式とは異なっていますが、今回の電気双極子の集合体モデルによる議論では、
誘電体の部分領域に働く力はこの式で表されることを示唆しています。