概 要
近年、無線で電力を伝送するワイヤレス給電の技術研究や開発が行われています。本ページでは電磁誘導方式のワイヤレス電力伝送の解析事例をご紹介します。
まず、基本モデルとして、図1のように、2つのコイルを考えます。
送信コイルと受信コイルを縦に並べています。またコイルには回路素子が接続されています。
図1.概要図
図2に等価回路を示します。
図2.等価回路
ここでは周波数100[kHz]で共振すると仮定し、コンデンサーの容量を決めます。
その際使用する自己インダクタンスは磁場解析から得られます。磁場解析で直接計算する方法に加えて、磁場解析からインダクタンスを計算し、等価回路で評価する方法も考えられます。
本ページでは両者を比較し、一致することを確認します。
使用ソフトウェア:PHOTO-EDDYjω
解析結果
磁場解析から求めたインダクタンスは以下の通りです。
自己インダクタンス:358.7[uH]
相互インダクタンス:38.4[uH]
よって、周波数100[kHz]で共振させるために必要なコンデンサーの容量は
7061[pF]
となります。
図3に周波数50[kHz]の磁束密度コンター図を示します。
ここでは、送信コイルの周辺の磁束密度が強くなっていて、共振していません。
図3.磁束密度[T] (絶対値) コンター図 周波数50[kHz]
次に周波数94[kHz]の磁束密度コンター図を示します。ここでは、受信コイルにも磁場が分布しています。
図4.磁束密度[T] (絶対値) コンター図 周波数94[kHz]
図5に周波数100[kHz]のときの磁束密度コンター図を示します。この周波数が共振周波数です。
図5.磁束密度[T] (絶対値) コンター図 周波数100[kHz]
図6に磁場解析から得られた受信コイルに流れる電流値(絶対値)と等価回路によって評価しました電流値を比較したグラフを示します。
抵抗R2は1[Ω]としました。インダクタンスとキャパシタンスは上記の値を使用しています。
図6.磁場解析と等価回路との結果比較
このように磁場解析と等価回路による結果が良く一致していることがわかります。
次はコイル間距離による影響を調べます。少し離れたところにある送信コイルを移動させ、受信コイルに近づけることを考えます。送信コイルが離れているとき、受信コイルに流れる電流は小さくなると予想されます。
図7に磁束密度[T]の絶対値のアニメーションを示します。
図7.磁束密度[T]の絶対値 アニメーション
送信コイルが近づくと、受信コイルの周囲に発生する磁束密度が強くなっています。コイルの位置を変更して、解析することにより、どの程度離れても問題ないか確認することができます。