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巻回型コンデンサの電界解析

概 要

巻回型コンデンサは、電極箔と誘電体を交互に重ねて巻き込んだ構造をしており、小型化をしつつ電極の面積を大きくしているのが特徴です。
PHOTO-VOLTBM では空気メッシュが不要なので、プログラムによるメッシュ変形と併用して複雑な形状のモデルを容易に作成することが可能です。

本事例では、巻回型コンデンサの電界解析を行います。
また、解析結果として得られたキャパシタンスと理論値の比較を行います。
なお、簡単のため、誘電体の比誘電率は $\varepsilon_r = 1.0$ (空気と同じ)としました。

      解析モジュール:PHOTO-VOLTBM

図 1-1. 概要図

解析条件

コンデンサの XY 平面における形状は、アルキメデスの螺旋 $r=a\theta$ (陰極)・$r=a(\theta + \pi )$ (陽極) に従うとします ( $a=\frac{1}{\pi} \times 10^{-3} \; [\mathrm{m}], \; 2{\pi}\;{\leq}\;{\theta}\;{\leq}\;32{\pi}$ )。
また、電極の厚みと高さはそれぞれ 0.1 mm・60 mm とします。

また、陰極には 0 V・陽極には 1 V の荷重条件を課しています。

図 2-1. メッシュ分割図

解析結果

図 3-1. 電場 [V/m] 全体図

図 3-2. 電場 [V/m] 中心付近拡大図

※図 3-1 及び図 3-2 で示された物理量 FLUX Qn の定義は $Q_n = {\nabla}_{n}\phi$ であり、電場の向きと逆符号です。

考 察

巻回型コンデンサを平行平板コンデンサに近似して陰極のキャパシタンスを理論的に求め、解析結果と比較します。

アルキメデスの螺旋の長さは以下の式で表されます。
\begin{equation}
L=\int \sqrt{r^2+ \left( \frac{dr}{d\theta} \right) ^2} d\theta = a\int \sqrt{{\theta}^2+1} \; d\theta
\end{equation}
したがって、陰極の長さを $L_1$ とすると、
\begin{equation}
L_1 = a \int_{2\pi}^{32\pi}\sqrt{{\theta}^{2} + 1} \; d\theta \simeq 1.603 \; [\mathrm{m}]
\end{equation}
となります。
よって、陰極の片側の面積を $S_1$ とすると、
\begin{equation}
S_1 = L_1 \times 6.0 \times 10^{-2} = 9.618 \times 10^{-2} \; [\mathrm{m}^2]
\end{equation}
となります。
陰極の外側の面はすべて陽極の内側の面と隣接していますが、陰極の内側の面の $2{\pi}\;{\leq}\;{\theta}\;{\leq}\;4{\pi}$ の部分は陽極の外側と隣接していません。
したがって、陰極の内側の面のうち陽極の外側と隣接している部分の長さと面積をそれぞれ $L_2, S_2$ とすると、以下のようになります。
\begin{align}
L_2 &= a \int_{4\pi}^{32\pi}\sqrt{{\theta}^{2} + 1} \; d\theta \simeq 1.584 \; [\mathrm{m}] \\
S_2 &= L_2 \times 6.0 \times 10^{-2} = 9.504 \times 10^{-2} \; [\mathrm{m}^2]
\end{align}
陰極-陽極間の距離は $d = 9.0 \times 10^{-4} [\mathrm{m}]$ なので、平行平板コンデンサに近似すると陰極の静電容量 $C$ は、
\begin{equation}
C = -\frac{\varepsilon_0 \left( S_1 + S_2 \right)}{d} \simeq 1.88 \times 10^{-9} \; [\mathrm{F}]
\end{equation}
と求めることができます。

一方、PHOTO-VOLTBM では物性ごとに表面の総電荷量を計算し、チェックファイルに記録します。
チェックファイルには以下のように書き出されます。

**************************** Surface charge ****************************

No.1 cathode -1.90072e-009 [C]
No.2 anode 1.90422e-009 [C]

チェックファイルに記録された陰極の電荷量は $-1.90 \times 10^{-9} \; \mathrm{C}$ です。
今回の解析では、陽極と陰極の電位差は 1 V なので、PHOTO-VOLTBM で解析を行った陰極のキャパシタンスは $-1.90 \times 10^{-9} \; \mathrm{F}$ です。
理論値との誤差は 1.1% です。