概 要
方形導波管にポリエチレン等の誘電体を充てんすると空気との境界面で電磁波の反射が起こります。
本事例では、規格 WRJ-5 の方形導波管の一部にポリエチレンが充てんされている系を考え、電磁波の分布を有限要素法を用いて解析します。
また、解析結果として得られた反射係数について理論値との比較を行います。
解析モジュール:PHOTO-WAVEjω
解析条件
空気側のポート(ポート1)から電場の最大値が 1 V/m になるような TE10 モードの電場を荷重条件として設定します。
空気・ポリエチレンの側面には全て対称境界条件を、電磁波が出力される面にはインピーダンス境界条件を設定します。
周波数:5.00 GHz
解析結果
ポリエチレン側の電場の絶対値が一定であることから、出力面で反射が起きていない(インピーダンス境界が正しく設定されている)ことがわかります。
散乱行列の計算において、空気およびポリエチレンの特性インピーダンスを ZAir = 279.052 Ω・ZPE = 156.987 Ω としました。
考察
参考文献 [1] で示されている理論解との比較を行います。
TE 波のインピーダンスは
\begin{equation}
Z_{TE}=\frac{j\omega\mu}{\gamma}
\end{equation}
で与えられます。したがって、空気とポリエチレンの特性インピーダンスの比は
\begin{equation}
\frac{Z_{PE}}{Z_{Air}}=0.5628
\end{equation}
となります。よって、空気とポリエチレンの境界面における反射係数は以下のようになります。
\begin{equation}
|\Gamma|=|\frac{Z_{PE}-Z_{Air}}{Z_{PE}+Z_{Air}}|=0.280
\end{equation}
解析で得られた S11 の値 0.275 と理論値の誤差は 1.80% となります。
有限要素法での解析が理論とよく一致していることがわかります。
★参考文献
[1] 倉石源三郎『例題・演習 マイクロ波回路』(東京電機大学出版局、1983)