概 要
1986年にベドノルツとミューラーによって臨界温度が高い酸化物超伝導体が発見されました。
リニア新幹線でも利用される超伝導体も磁場解析の対象となります。
標準的な磁場解析では、比較的大きな電気伝導率を使用することによって、一定の評価は可能です。より詳しく超伝導体を解析するためには、超伝導体を表現するモデルを数値解析に取り込む必要があります。
超伝導体を表現するモデルとしては、臨界状態モデル、Kimモデルなどが挙げられます。
臨界状態モデルは渦糸に働くローレンツ力と超伝導体内部の不純物などによって生じるピン止め力が釣り合っているとした物理モデルです。このつり合いの状態を臨界状態といい、この時流れる電流を臨界電流と言います。
臨界状態モデルは、
として表します。
Jcは臨界電流に対応する臨界電流密度です。電場が存在すれば、臨界電流密度Jcで流れ、電場がゼロであれば、そのまま流れ続けることになります(電流密度が時間変化しない)。臨界状態モデルではJcを一定にします。
超伝導体を解析する場合、通常の磁場解析プログラムにこのような構成方程式を追加する必要があります。
PHOTO-EDDYではこのような構成方程式をユーザー側で指定することができ、一定のJcだけでなく、Jcが磁束密度に依存するようなKimモデルも解析可能です。
どのような数式を使用するかどうかはユーザー側の判断になります。計算の収束性に配慮が必要ですが、自由度が高い入力方法をご利用頂けます。
詳しい入力方法については、弊社までお問い合わせください。
使用ソフトウェア:PHOTO-EDDY
解析結果:臨界状態モデル
図1−1に概要図を示します。ソレノイドコイル内に超伝導バルクを配置しています。
超伝導体は臨界状態モデルとし、臨界電流密度Jcは1.0×109[A/m2]としました。
空芯のときに、コイル中心において、磁束密度が最大5[T]となるように入力電流を調整しています。
図1−1.概要図
図1−2にメッシュ分割図を示します。軸対称解析としました。
図1−2.メッシュ分割図
図1−3に時刻ステップを示します。50Hzのパルス電流をあたえ、コイルの入力電流がゼロにおいても、磁場を得られるかどうか確認します。
図1−3.時刻ステップ
図1−3で赤色の矢印で示した時刻の磁束密度のベクトル図を図1−4から図1−7に示します。
図1−4.超伝導バルクの磁束密度[T] ベクトル図 t=5ms
図1−5.超伝導バルクの磁束密度[T] ベクトル図 t=10ms
図1−6.超伝導バルクの磁束密度[T] ベクトル図 t=20ms
図1−7.超伝導バルクの磁束密度[T] ベクトル図 t=100ms
時刻が100msのときの結果を見ますと、入力コイルに電流が流れていなくても、最大で3.5[T]程度の磁束密度が維持されています。
関連資料
超伝導体モデリングの入力方法、論文リストなど。
》ご請求はこちらから